抄録
沿岸域に暴露された鉄筋コンクリート構造物は,塩分や炭酸ガスなどの多様な劣化作用を受け,その劣化過程も様々である.本稿では,潮位差3mを超える瀬戸内海に面する火力発電所の海洋・陸上構造物を対象として,鉄筋腐食の状態とコンクリートに影響を及ぼす要因を調査して劣化特性を分析した.その結果,海岸構造物と陸上構造物でその劣化要因が異なり,ひび割れのない健全な部材を対象とする場合,塩化物イオン浸透が主な劣化要因となる海洋構造物において15~20年程度,鉄筋かぶりが少なく中性化の影響を受けやすい陸上構造物においては25~30年程度で,鉄筋が腐食環境に至る可能性があることが明らかとなり,当該材齢が維持管理上の安全側の目安となることが示唆された.