抄録
本稿は、日本の石川県金沢市の中心市街地周縁部で実施された大学生向けの巡検の趣旨と内容を記録する。この巡検では、都市社会におけるさまざまな施設を用いて、都市社会の変化とその意味を明らかにした。たとえば、(1)産業的な関わりという視点からみた地方鉄道の衰退や廃校舎の活用、(2)学生寮の廃止と市当局による学生支援、(3)江戸時代に由来する歴史的建築や都市空間の観光と住民利用を取り扱った。その結果、半径700m未満と狭い範囲にもかかわらず、本巡検には以下のような意義があった。(1)テーマは大学生に身近で、彼らの関心を引きつけた。(2)参加者は、地誌学の立場で地域を多角的に理解するだけでなく、系統地理学の立場で、一般的な社会現象の文脈で個々の事例を理解することもできた。