抄録
本稿では、2010年代以降に急成長した新興ワイン産地におけるヴィンヤード(委託醸造のワインを販売する農家)の経営実態と農村部での存在意義を検討した。その結果、事例とした長野県東信地域北部では経営者の大半は大都市圏からのIターン者で、遊休農地を借りて専用種ブドウを栽培して比較的高価なワインを少量販売しており、多くは副業への従事や貯蓄・年金を費やすことで生活していることがわかった。存在意義としては遊休農地の再生利用、高齢化する農村コミュニティの若返り、副業の土建業や青果物収穫作業における貴重な労働力、民宿・カフェなどの起業の実践・模索を通じた農村部の活性化が挙げられる。ヴィンヤードがワイナリーの近隣に集積していることは、委託醸造先の選択肢を広げ、産地ブランドの形成やワインツーリズムの実践を容易にしているが、ワイナリーにとっても受託醸造は安定収益源であり、両者の併存が新興ワイン産地の発展にとって重要といえる。