抄録
症例は 58 歳の男性.断続する胸痛が出現し,不安定狭心症の診断で入院.冠動脈造影で左回旋枝と右冠動脈にそれぞれ 90%狭窄を認めた.抗血小板薬の内服およびへパリン・硝酸薬の持続点滴で経過観察後,左回旋枝に対し経皮的冠動脈形成術を行った.病変はびまん性で薬剤溶出性ステントを 2 本留置した.2 本目のステントを留置した直後より冠動脈内に血栓が出現した.血管内超音波上ステント malapposition は無く,血小板数の低下も認めなかった.ACT を 250 秒以上に保ち,繰り返しステント内拡張術を行ったが,その都度血栓が出現した.そこで,アルガトロバンを投与したところ,血栓が消失した.ヘパリン起因性血小板減少症を示唆する所見は無かったが,臨床的にアルガトロバンが有効であった.