日本顎口腔機能学会雑誌
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学術大会抄録
舌先端と上顎切歯の形状が歯茎摩擦音[s]の発音に及ぼす影響
吉永 司多田 耕平野崎 一徳飯田 明由
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2022 年 29 巻 1 号 p. 24-25

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抄録

I.目的

歯茎摩擦音[s]とは子音の一種で,日本語の「シ」を除くサ行の発音に用いられる.[s]を発音する際には,舌先端を歯茎に近づけ,狭窄流路を形成することによりジェット乱流を生成し,そのジェット乱流が上顎切歯や口唇に当たることにより,音が発生することが知られている.そのため,歯列補綴治療による総義歯上顎中切歯の歯軸角度調整1)や,顎変形症の外科的矯正治療による咬合状態の変化2)が発音へ及ぼす影響など報告されている.

この摩擦音[s]の音響的な特徴を決める口腔形状の要素を調べるため,解剖学的形状を単純化したモデルによる研究が行われてきた3, 4).これらのモデルは,発音時の医療画像から口腔前部の舌や上下前歯の長さ・高さなどのパラメータを抽出し,矩形流路によって表現される.また我々のグループでは,上顎中切歯の歯軸角度が[s]の音響的特徴に与える影響を予測するため,角度が変更可能なモデルを提案し,実際の口腔形状から発生する音と比較してきた5)

しかし,これまでのモデルでは[s]の音量の減少は予測できるものの,スペクトル形状を予測できる精度は得られなかった.本研究では,口腔形状の左右非対称性という新たな要素をモデルに入れることで,スペクトル形状までより良く予測できる新たな口腔モデルを提案する.

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© 2022 日本顎口腔機能学会
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