2017 年 1 巻 p. 34-46
実践的な教育を大学で行うことへの産業界からのニーズは高く,世界各国で私企業を母体とする私企業系大学のプレゼンスが高まっている.私企業系大学の多くは伝統的な大学の受け皿としての機能を持つが,中にはIMDのように教育面でハーバード・ビジネススクール(HBS)をはじめとする研究大学と伍している私企業系大学も存在する.ネスレ系のIMDは,様々なランキングが示すとおり,世界トップクラスのビジネススクールとして位置付けられる.
こうした背景に基づき,本稿ではトップクラスに位置する私企業系大学の象徴的存在であるIMDが,HBSなど研究大学附属のビジネススクールと伍している要因を明らかにすることを主眼に置く.筆者による調査研究の結果,その要因はIMDの教育プログラム(非学位型のエグゼクティブ・プログラム,教員とスタッフの役割分担)及び教員(教員採用,FD活動,教員評価)にあるとの結論に達した.
IMDは,顧客ニーズの把握とそれを反映した人事制度など私企業系大学としての性格を維持しつつ,各教員の専門性を十分に考慮するなど研究大学の特性も多分に取り入れることで,HBSなど研究大学附属のビジネススクールに伍していると推察される.