抄録
絶滅危惧種のホトケドジョウは湧水のある環境の指標動物であり,谷戸の代表種でもある。本種は圃場整備された現代の谷戸でも生息が確認されている。本研究では,本種の谷戸内の移動の実態および生活史を明らかにし,本種が生息を続けられる圃場整備後の保全対策の提言を行った。調査は多摩川の支流の三沢川源流域に位置する,3本の谷戸の用水路および細流で行った。環境調査と標識調査を行った結果,谷戸の水路環境によって生活史が異なることが明らかとなった。圃場整備後も本種が生息を続けるためには,非灌漑期にも小水路を機能させることや,水路に堰を残すことが重要である。