抄録
暑熱指標WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature) の屋外長期計測から,2008年夏季における熱中症リスクを岡山市街地内の空間形態が異なる3空間(大規模舗装地・建築物稠密地・農場)に対して解析した。運動や生活活動時の熱中症予防指針が定める「運動禁止・危険」ランクWBGT31℃以上を記録した日は,観測期間63日中,大規模舗装地で23日,農場で21日と,全体の約1/3を占める一方,建築物稠密地では3日しか記録されなかった。また,観測期間中における熱中症救急搬送データと日最高WBGTの比較から,日最高WBGTが30℃を超えてくると岡山市で熱中症リスクが急激に高まる特徴が示された。そのWBGT30℃以上の暴露時間も大規模舗装地・農場と建築物稠密地のあいだに大きな差異が認められた。これらの違いは,建築物稠密地の日陰形成がWBGTの上昇を抑制していたことに起因する。