抄録
本研究の目的は,死亡リスクの情報収集が困難な場合のリスク削減便益の計測を行うことである。推計には,東日本大震災前の津波被害に関するデータを用いた。個々人の認知している死亡リスクを質問し,その死亡リスクの削減幅(10%,50%, 90%)に対する支払意志額を計測した。 回答者が認知している津波災害による死亡リスクの範囲(0.3人/10万人から2.3/10万人)に対し,10%,50%および90%の各削減幅のもとで,津波災害の死亡リスクの削減に対する支払意志額(円/1回/10 年)は約657 円から約2,976 円として計算された。最後に,震災前の津波災害のリスク削減便益は,水難事故のリスク削減便益の値とほぼ同程度であることが示された。