主催: 一般社団法人環境情報科学センター
p. 251-256
漁業活動は,魚介類等の食糧を供給するのみならず,栄養塩フローの一端を担う要素としても重要な位置を占めていると考えられるが,その実態は充分に明らかにされていない。そこで,本稿では霞ヶ浦を事例として漁業活動による栄養塩の系外移出量を推計し,流域における諸要素と比較対照した。その結果,2010 年の漁業活動に伴う栄養塩移出量は総窒素で約6 万kg,総リンで約4.5 千kg と推計された。 これは,当該流域における汚濁負荷量に対し総窒素換算で約1.5 %,総リン換算では約3 %に相当する。近年,日本の内水面漁業は衰退の一途を辿っているが,その栄養塩移出効果を他の手段で代替するには多大なコストを要する。従って,漁業を水質汚濁負荷低減技術の一つと捉えてその効果に見合った助成を行うなど,漁業活動の維持に適切な施策が望まれる。