抄録
九州地方における植物種の全種数および低頻度種数の分布をニッチベース分布予測モデルを用いて解析した。解析の結果,全種数は,暖かさの指数,冬季降水量,夏季降水量によって主に説明された。全種数は,温暖で年間を通じて多雨な条件,寒冷だが冬季に降水の多い条件で多いと予測された。一方,低頻度種数は,気候条件に加え,土壌,地形,雲霧帯指数も重要だった。温暖で年間を通じて多雨な条件は全種数の場合と共通だったが,冷涼で火山由来の地形条件の地域,雲霧帯のかかりやすい地域でも種数が多いと予測された。全種数の多い場所と低頻度種が多い場所は,必ずしも一致しない。