本研究では,尾瀬国立公園の湿原を取り上げて,ニホンジカ(以下,シカという)による湿原への影響の認知度と管理施策に対する支持意向の関係性を明らかにすること,湿原に対する価値意識の構造の把握を通して尾瀬の価値をまもるための管理施策を考察すること,の2 点を研究目的とした。その結果,シカ対策では大面積の侵入防止柵が最も支持され,尾瀬の壮大な景観の価値が強く肯定されていた。また,実物のシカとシカの泥浴び場(ヌタ場)の視認と,銃器,罠による駆除の対策の支持との間で正の連関があった。大面積を対象とする管理施策は,尾瀬の景観の価値認識よっては支持されず,影響の深刻度の認知によって支持されており,意識構造の強化が必要と考えられた。