抄録
本研究は,行政と国民の双方の観点から文化景観概念を活用した国立公園政策の形成に資する基盤的議論を展開することを目的とした。行政的視点からは,環境省自然環境局長通知に規定された「文化景観」概念が,行政文書主導で形成され,定量的側面の明確化により重要性を高めていることを示した。国民的視点からは,既往研究が示す観光ガイドブックおよびその読者層の認識との間に一定の整合が認められ,「文化景観」の具体的な要素が意味ある形で理解され得ることを示唆している。「文化景観」概念は,歴史的に行政主導で形成されてきたが,今回の調査結果は,それが国民との意思疎通の基盤としても機能し得ることを示唆している。