本研究では、腐食発生限界塩化物イオン含有量近傍の塩分を含むモルタルにおいて、水セメント比および塩分量が異なる場合の自然電位、分極抵抗および分極曲線等の電気化学的特性値を実測した。その結果、自然電位はコンクリート中の塩化物イオン量の増加に対して線形的かつ連続的に低下する傾向を示し、鉄筋周囲の環境の変化に対応していることが確認された。分極抵抗およびアノード分極曲線より判定される不動態グレードは塩化物イオン量が0.3%~0.4%-cement近傍において大きく変化する傾向を示し、鉄筋表面の不動態皮膜の破壊が生じていることが確認された。このことから、不動態皮膜の破壊が開始するする塩分量は、現在腐食発生限界塩分量とされる0.4%-cementとほぼ同等か若干小さくなることが示された。