2012 年 66 巻 1 号 p. 79-86
本研究では、セメント硬化体をCaCl2溶液に浸せきし、CaCl2劣化に及ぼすセメント種類や水セメント比の影響を検討した。また、劣化を生じたOPCセメントペースト硬化体を用いて反応生成物と変質部の詳細な分析を行った。その結果、硬化体の劣化はCa(OH)2から膨張性の3CaO・CaCl2・15H2Oが生成することで生じ、その劣化程度は3CaO・CaCl2・15H2Oの生成量と硬化体中の空隙量とのバランスによって異なると推察した。そして、溶液作用面から少し内部で生成する3CaO・CaCl2・15H2Oの体積増加が浸透面に沿ったひび割れを引き起こし、セメントペーストと3CaO・CaCl2・15H2Oが交互に積層する層状のひび割れが形成されると推察した。