2023 年 77 巻 1 号 p. 35-43
処女乾燥時に起きるセメントペースト(HCP)の空隙構造変化は、再吸湿過程で非回復性となる構造変化が介在する。本研究では、HCPの空隙中にある水分子の1Hを核種とした1H NMR relaxometryを用いたT1-T2緩和相関測定を、再吸湿過程におけるHCPにおいて実施した。その結果、2次元のT1-T2緩和相関から、封緘時ではT1/T2≈1.7の対角線上にinterlayer、gel、capillary空隙に由来する緩和成分が存在する。再吸湿過程では対角ピーク上で再吸水挙動が確認される一方、95%RHでの再吸湿においても非回復性である、他の空隙中と運動性の異なるC-S-H中の1H緩和成分がT1/T2≈12.3に確認された。この緩和成分は、再度水没させた場合のみ回復しうる、処女乾燥時のC-S-Hの非回復性の構造変化に由来するものと考えられる。