津軽海峡における鯨類目視調査から、カマイルカLagenorhynchus obliquidensは本海峡で最も多く観察される鯨類であり、4月から6月に発見が集中することが分かっている。本研究では、2003年5月から2009年9月までに函館~青森間を結ぶフェリーに乗船して得られた目視調査記録を分析し、カマイルカの本海峡内における群れサイズの時間的変動を明らかにした。ここでは3月から7月をカマイルカの本海峡への来遊時期であるとし、平滑化スプライン回帰を用いてその期間の群れサイズの変動を解析した。その結果、本海峡への移入期にあたる4月に群れサイズは大きく、その後5月から6月上旬にかけて縮小し、本海峡からの移出期にあたる6月中旬には群れサイズは再び拡大した。津軽海峡においてカマイルカが移入、移出時に大きな群れを形成し、滞留時には群れを分散させ採餌を行っていることを示唆する今回の結果は、既往の知見と一致した。