日本セトロジー研究
Online ISSN : 2434-1347
Print ISSN : 1881-3445
20 巻
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
  • 本間 義治, 箕輪 一博, 中村 幸弘, 岩尾 一, 青栁 彰, 古川原 芳明, 岩下 雅彦, 大原 淳一
    2010 年20 巻 p. 1-6
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/12/04
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    2008年1~12月における佐渡汽船新潟~両津航路と、2008年5月~2009年5月の間に、佐渡汽船直江津~小木航路および新潟県沿岸・沖合における海生哺乳類の漂着・混獲・目撃等の記録を取り纏めた。漂着は12件で(ハナゴンドウ1件、バンドウイルカ2件、カマイルカ5件、キタオットセイ2件、ゴマフアザラシ2件)であった.漂着例の少ないのは、期間中に大時化があまり発生しなかったことに起因していると思われる。混獲されたミンククジラ5個体は、沿岸の大型定置網に入ったもので、佐渡島(4)と粟島(1)である。目撃記録を整理してみると、2008年中における新潟~両津航路の佐渡汽船乗組員による鯨類目撃記録は、前年(2007年)の69件に比し,45件と少なかった.2008年には、クジラの10頭~数十頭の群れは7~8月に4件目視されたが、いずれもハナゴンドウと観察された。直江津~小木航路でも、海鳥観察の際にクジラ類8件,イルカ類31件、キタオットセイ5件(計44件)と多く、月別には、新潟~両津航路の場合5月がピークで、時間帯は10~11時に多かった。これらは、ジェットフォイル(J)が36回、カーフェリー(C)が7回、ほかに第9管区海上保安本部のヘリコプター(H)が1回から成る。目撃シーレーン(航路帯)は、佐渡海峡北端の中央帯に圧倒的に多く、30件を占めた。遊泳方向は北~北東が7件、南~西が10件である。新潟県内では、年々海生哺乳類の目撃・漂着記録が多く寄せられるようになった。私たちは、今後も互いの協力体制を保ちつつ、情報の蒐集に努めたい。

  • 森満 保, 河野 正, 平井 卓哉, 栗田 壽男
    2010 年20 巻 p. 7-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/12/04
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    2009年3月19日.宮崎県串間市大字大納恋ヶ浦の浜辺に単独座礁死したハナゴンドウ(雄)の、聴器の病理組織所見を報告した。両側鼓室胞内から、クラシカウダ属寄生虫、各十隻前後を採取した。鯨石の脱灰・HE染色による病理組織検査では、内耳炎の所見は無く、ラセン神経節にも著変を認めなかった。しかし内耳道内の蝸牛神経は、道底近辺では略正常であったが、中間部から中枢側まで、高度の変性と崩壊を認めた。また周耳骨周囲の結合組織内に散在する寄生虫卵と、輪切りにされた寄生虫体を認め、更に蝸牛周辺の結合組織内に著明な石灰化巣を認めた。顔面神経は略正常であった。単独上陸死の原因として、クラシカウダの異所寄生(聴器)により、エコーロケーション機能を失ったための採餌不能・飢餓衰弱を推測した。

  • 小野 雄大, 佐橋 玄記, 西沢 文吾, 山田 若奈, 柴田 泰宙, 松石 隆
    2010 年20 巻 p. 13-15
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/12/04
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    津軽海峡における鯨類目視調査から、カマイルカLagenorhynchus obliquidensは本海峡で最も多く観察される鯨類であり、4月から6月に発見が集中することが分かっている。本研究では、2003年5月から2009年9月までに函館~青森間を結ぶフェリーに乗船して得られた目視調査記録を分析し、カマイルカの本海峡内における群れサイズの時間的変動を明らかにした。ここでは3月から7月をカマイルカの本海峡への来遊時期であるとし、平滑化スプライン回帰を用いてその期間の群れサイズの変動を解析した。その結果、本海峡への移入期にあたる4月に群れサイズは大きく、その後5月から6月上旬にかけて縮小し、本海峡からの移出期にあたる6月中旬には群れサイズは再び拡大した。津軽海峡においてカマイルカが移入、移出時に大きな群れを形成し、滞留時には群れを分散させ採餌を行っていることを示唆する今回の結果は、既往の知見と一致した。

  • 本間 義治, 岩下 雅彦
    2010 年20 巻 p. 17-19
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/12/04
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    前報(本間ら2010)に引き続き,佐渡海峡の新潟~両津間における佐渡汽船ジェットフォイル(J)ならびにカーフェリー(C)による鯨類目撃記録を,2009年分につき纏め,整理してみた.目撃回数は141回と極めて多く,1994年からこの記録を取り始めて以来最高の数値であった.鯨類の目撃は,従前通り1月から始まり,4月の51回をピークに3~5月に集中していたが,この傾向は前年(2008)より1カ月早かった.目撃時間帯は,日中には満遍なくみられたが,午前10時(29回)と午後4時(16回)の二つの山があり,例年と変わらなかった.CとJの目撃回数は,C39 /J101とJが多かったが,これには就航便数などが関係していると思われた.1回当たりの鯨類目撃頭数は,1頭が大半であったが,数頭のことも数回あり,最多は9月26日の20~30頭であった.種類はほとんどが不明であったが,確認できたものはミンクが最も多く,次いでツチクジラ,ハナゴンドウであり,1月22日にはシャチの群れも観察され,貴重な記録となった.遊泳方向は,81回と過去にはない多くの例が記録されたが,南下が47回,北上が34回で,特定方向に限らなかった.航路程(レーン)では,鯨類を含む障害物との衝突を避けるために設定し,70km台で走航行する減速区間(ポイント2.0~4.5)に目撃回数が集中し,113回であった.その間でも,ポイント2.0~2.5の短区間が31回と濃密であったことに特色があった.幸い,2009年中には就航船と鯨類などとの接触ないし衝突事故は無かった.

  • 南部 久男, 石川 創, 山田 格
    2010 年20 巻 p. 21-29
    発行日: 2010年
    公開日: 2019/12/04
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    コククジラのアジア系個体群の過去から現在に至る生息状況を知るため、文献を調査した。確認された生息域は、北はベーリング海・オホーツク海北部から、南は南シナ海の中国南部沿岸までの広い範囲に及んだ。確認地点は、各海域の沿岸が大部分であったが、北太平洋の水深4000~5000mの海域からも記録があった。摂餌海域は、本来はオホーツク海北部であったが、現在はサハリン北東部沿岸に狭まっていると考えられる。明治期の文献によれば、北海道周辺も摂餌海域であったと考えられる。回遊ルートは、従来から、日本海の大陸側、日本列島太平洋側のルートが知られていた。前者のルートは、朝鮮半島では1930年代以降捕獲が少数になった後も、1980年代まで記録があり、少数が回遊ルートとして利用していたと考えられるが、1989年を最後に記録がなく、近年はほとんど利用されていないと思われる。後者のルートは、2000年以降も目撃、混獲、ストランディングが見られることから、現在も回遊ルートとして利用されていると考えられる。この他に、日本海の日本列島側の回遊ルートの存在が明治期の文献から示唆されていたが、1950年以降、混獲やストランディングが確認されたことから、回遊ルートとして時々利用されていると思われる。しかしながら、本回遊ルートは、記録が少なく、太平洋側のルートに比べ利用は少ないこと思われる。繁殖海域は朝鮮半島南部と中国沿岸の間と推測されるが、記録が少なく、さらなる調査が必要である。

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