日本先天異常学会会報
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ヒキガエル幼生の肢芽の予定骨格中胚葉における仁の大きさの縮小と趾異常成立との関係
武藤 義信
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1972 年 12 巻 3 号 p. 139-146

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抄録

筆者(Muto、1969b、c;1970b、c)はさきにヒキガエル幼生を30±1℃の高温で飼育すると欠損的な趾(指)異常が生ずることを報告した。その後(Muto、1971c)この場合の感受期は筆者の発生段階3-4の問にあること、また30±1℃の高温で飼育した幼生においては、腋芽の前軟骨の分化のはじまる発生段階4において、予定骨格中胚葉の有糸分裂率が、20±1℃の適温で飼育した幼生におけるより著しく低下することがわかった。このようなことから筆者は有糸分裂率の低下が予定骨格中胚葉の量の不足をきたし、これが欠損的な趾(指)異常をおこすのでたいかと推測した。有糸分裂に必要た物質が既に準備されているとみなされる分割期の卵をのぞき、一般に仁は有糸分裂に不可欠の役割をもっていることが知られているので、上記のような有糸分裂率の低下は仁機能の低下に起因するのでないかと想像される。このような見地にたって腋芽の予定骨格中胚葉の仁の大きさをしらべることとした。20±1℃の適温または30±1℃の高温で1-4日飼育した発生段階3-5の幼生につき、その腋芽の予定骨格中胚葉の仁の直径を測ったが、便宜上1核に1仁をもつ核の仁のみを測定し、2仁をもつ核の仁は除外した。仁の形態はほぼ球形であるので、一応仁を球とみなしてその大きさを比較した。30±1℃の高温で飼育した幼生においては、前軟骨分化のはじまる発生段階追において、仁の大きさが、20±1℃の適温で飼育した幼生におけるよりも、特に著しく小さいことがわかった。このことは、この発生段階において仁機能が高温により著しく低下することを示すとともに、これが有糸分裂率の低下をきたしさらに欠損的な趾(指)異常をおこすのでないかと考えられる。

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© 1972 日本先天異常学会
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