抄録
二足合脚体の男児の1例を報告する.母親は30歳,第3回目の妊娠である.癒合した脚には大腿骨2本,脛骨2木,腓骨1本があり,右足には中足骨1本と趾骨2本,左足には遊離した趾骨!本が認められた.腎臓は1個で岬角の右に位置し,その大きさは6mm×4mmであった.尿管は長さ11mmで,9mm×5mmの小円筒状の膀胱に終っていた.腎臓,尿管,膀胱,精巣については組織学的にその構造を確認した.膳動脈は1本で下賜間膜動脈の直下で大動脈より分岐しており,起始の上方移動が認められた.この膳動脈分岐部以下の大動脈とその終枝はかなり細くなっていた.木例は痕跡的な腎臓および尿管と発育不全の膀胱を有するものとしては文献上二番目の症例である.注目すべき点は合脚体では上位分岐する単一臍動脈を伴うことで,臍動脈の異常が種々の奇形の原因となりうることを示している.生じる奇形の型は臍動脈が腹大動脈と置換している程度と,随伴する諸素因によって変化するものと考えられる.