抄録
萌芽前の放射性Csに汚染されていない茶苗木に,放射性Csを含んだ2011年産一番茶抽出液を散布し,放射性Csの古葉や茎から一番茶新芽への転流について検討した。
その結果,一番茶新芽には放射性Csが検出され,その濃度比(137Cs濃度/134Cs濃度)は1.31であった。これは,抽出液の放射性Csの濃度比である1.35,散布1日後の古葉及び茎における放射性Csの濃度比である1.45及び1.28とほぼ等しいことから,萌芽前の古葉や茎に散布された放射性Csは,新芽に転流すると考えられた。また,樹体表面に付着した放射性Csは,降雨により著しく減少することが明らかとなった。
さらに,成木園の茶樹で枝及び幹を表層と木部に分離し,それぞれの放射性Cs濃度を測定した。その結果,放射性Csは,枝及び幹の表層及び木部に存在しており,フォールアウトから1年7ヶ月〜1年9ヶ月が経過した時点では,枝及び幹の木部に移行していることが明らかとなった。