茶業研究報告
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報文
  • 片井 秀幸, 池田 早希, 鈴木 利和
    2022 年 2022 巻 133 号 p. 1-13
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    近年,寒冷紗などの被覆資材でチャの新芽の生育期に強遮光 (100 %遮光) することによって作られる白葉茶の栽培法が開発された。本研究では,静岡県茶奨励品種など12品種を対象として,強遮光処理による摘芽形質,葉色,生葉収量,官能評価による荒茶品質および遊離アミノ酸含有量について調査し,白葉茶の生産に適した品種の選定を試みた。強遮光処理によってSPAD値は低下し,いずれの品種も白葉化した。特に,ʻ山の息吹,さえみどり,めいりょく,ふうしゅん,べにふうきʼはSPAD値が10以下でʻやぶきたʼでの値を下回った。一番茶期の生葉収量は137〜317 kg/10 aで, ʻさやまかおり,香駿,べにふうき,かなやみどり,おくひかり,さわみずかʼがʻやぶきたʼの収量と同等以上であった。全ての品種で全遊離アミノ酸含有量が著しく高まり,特に,ʻさえみどり,つゆひかりʼが10 %以上と高含有であった。官能評価による荒茶品質の評価では,ʻ山の息吹ʼがʻやぶきたʼよりも優れ,ʻさえみどり,香駿ʼも同程度に優れた。

    強遮光処理によって白葉茶を生産するうえで,収量性を重視した生産にはʻ香駿,かなやみどり,さわみずかʼが適し,収量性を考慮に入れずに荒茶品質や葉色を重視する場合には,ʻ山の息吹,さえみどり,やぶきたʼが適していた。また,品種特有の特徴的な香気や滋味を生した生産には,ʻ香駿ʼが適し,テアニン高含有茶の生産には,ʻつゆひかりʼが適していると考えられた。

  • 長尾 英幸, 施 欣慧, 傅 春旭, 大西-亀山 真由美, 佐藤 豊三, 柿嶌 眞
    2022 年 2022 巻 133 号 p. 15-25
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    チャもち病菌Exobasidium vexansはチャに大きな被害をもたらす病原菌であるが,その人工培養については,困難とされていた。培養方法の確立はこの病原菌の特徴を明らかにするために,また有用な防除方法の 開発にとって重要である。本病菌は一般的なカビ用の培地である市販のジャガイモ煎汁ブドウ糖寒天培地 (PDA) では生育しなかったが,ジャガイモ煎汁ブドウ糖培地 (PDB) に食用寒天を加えたPDA培地では生育可能となったため,食用寒天の元素分析を行った。その結果,0.6 %以上カルシウムを含む寒天が本菌のPDA上でのコロニー形成に関与していることが示唆された。寒天15gに対しそれぞれ0.7 %と10 %濃度となるようなカルシウムを添加したPDAを作成し培養した結果,両濃度のコロニー生育に対する違いはなく,100 mgL-1のカルシウム (寒天重量15 gL-1に対して0.7 %カルシウム濃度相当) を添加した培地で本菌は培養可能であることが明らかとなった。また,7種類のカルシウム塩 (塩化カルシウム,塩化カルシウム二水和物,硝酸カルシウム四水和物,水酸化カルシウム,炭酸カルシウム,硫酸カルシウム二水和物およびリン酸一水素カルシウム) の中で,本菌は炭酸カルシウムあるいはリン酸一水素カルシウム添加で生育し,炭酸カルシウム添加が最も適していた。なお,カルシウム塩を添加したPDAの水素イオン指数は5.35から7.56であった。本菌は,今回開発した培地上で良好に生育し,培養を維持することができた。また,培養23日後に担子器と担子胞子が観察された。

  • 石川 巖
    2022 年 2022 巻 133 号 p. 27-34
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    1981年に日高町,1981年,1983年,1989年と1991年に埼玉県茶業試験場 (現,埼玉県茶業研究所) の,いずれも可搬型摘採機管理茶園において,コミカンアブラムシの寄生菌について調査し,2種の昆虫疫病菌:Neozygites freseniiZoophthora radicansの発生を認めた。N. freseniiによるコミカンアブラムシの病死虫は無翅と有翅胎生雌の幼虫と成虫であった。N. freseniiの休眠胞子を形成した病死虫が7月中旬と9月上旬以降に認められ,4月中旬から5月中旬にかけて発芽した休眠胞子を認めた。N. freseniiによるコミカンアブラムシの病死虫率は低かったが,Z. radicansはさらに低かった。

技術レポート
  • 山下 幸司, 竹本 哲行
    2022 年 2022 巻 133 号 p. 35-38
    発行日: 2022/06/30
    公開日: 2024/07/01
    ジャーナル フリー

    自然仕立て茶園の3品種‘さみどり,あさひ,やぶきた’において,葉および枝条を実測した。‘さみどり’の葉長,葉幅,葉面積は他の2品種に比べて有意に小さく,‘あさひ’の葉幅は他の2品種より有意に大きかった。葉形指数は差がなかった。推定式から算出した推定葉面積指数は‘さみどり’で5.8,‘あさひ’で7.3,‘やぶきた’で8.9であった。単位面積あたりの葉数および枝条数は‘さみどり’で最も多く,あさひ’で最も少なかった。枝条長は‘やぶきた’で最も長く,‘あさひ’で最も短かった。30 cm未満の枝条の割合は‘さみどり’で最も低く,‘あさひ’で最も高かった。

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