チャノミドリヒメヨコバイは,チャの新芽を吸汁加害する重要害虫であり,その被害は収量に大きな影響を及ぼすが,効率的な防除のための被害許容水準と要防除水準は,これまで明確ではなかった。本研究では,静岡県内の ‘やぶきた’ 茶園において,様々な殺虫剤を用いた操作実験を3年間にわたって実施し,二番茶芽における本種の発生密度,新芽被害,および収量との関係を詳細に解析した。その結果,摘採前の本種の密度および被害程度と,100芽重 (収量指標) との間に有意な負の相関関係が確認された。また,多発生時には50%以上の著しい減収が確認され,本害虫の深刻な影響が改めて示された。各項目間の関係から得られた回帰式を用いて,100芽重に基づく被害許容水準と要防除水準を推定した。その結果,例えば5%減収を許容水準とした場合,新芽の被害芽率は8.0%,被害度は0.06,防除適期 (開葉初期) における要防除水準は,たたき落し1か所当たり0.35頭と算出された。10%減収を許容水準とした場合では,それぞれ15.9%,0.12,および0.69頭となり,要防除水準を5%減収,10%減収のいずれに設定しても,非常に低い密度であった。これらの結果は,二番茶期においては,本種に対する防除がほとんどの茶園で必要であることを示唆している。本種の防除にあっては,有効薬剤の選定に加え,耕種的防除手段などを組み合わせた総合的な防除体系の構築が不可欠である。
本研究では,定植当年の茶樹における夏期の高温対策として,2021~2023年および2025年に異なる遮光率 (30~85%) の被覆資材を用いて夏期にトンネル被覆を実施した。遮光区では光飽和点を満たす光環境を維持しつつ,葉温の上昇が抑制され,葉から空気への蒸気圧差 (VPDleaf) の低下を通じて蒸散環境の改善が示された。地上部の生育を植物生長指数 (PGI),地下部の生育を掘り上げた株の根を画像処理することにより評価した結果,すべての遮光区が無被覆区よりもPGIが優れた。一方,85%遮光区では地下部の生育が無被覆区と同程度にとどまった。以上のことから,定植当年の茶樹における夏期の高温・乾燥対策としては,30~60%程度の遮光が地上部,地下部ともに生育面で有効であることが明らかとなった。
次に,室内試験により地下部温度と高温遭遇時間の影響を検討した。その結果,地下部温度が50℃では,遭遇時間が長くなるほど被害率が顕著に増加した。また,地上部に可視的な変化が現れる前に,根の呼吸活性の低下が確認された。このことから定植当年の茶樹では高温条件下で地下部の障害が地上部に先行して生じる可能性がある。
茶生産者の管理面積の増加により,簡易な摘採適期を判断する技術が求められている。本研究では,安価な撮影機器で撮影した生葉画像から,深層学習モデル (VGG16) を用いて生葉熟度の指標である全窒素 (TN) 及び中性デタージェント繊維 (NDF) を推定する技術を開発した。‘やぶきた’ 一番茶を対象に生葉の撮影画像から成分を推定するモデルを構築・検証し,TN推定が可能であることを確認した。撮影回数や生葉量の影響についても検討し,撮影枚数は4枚以上とし,撮影する生葉量は約60-250gが適当であることを明らかにした。今後は萎凋葉や ‘やぶきた’ 以外の品種,一番茶以外の茶期の生葉,NDFの推定にも適応可能な汎用性の高いモデルを開発し,現場に普及することが望まれる。
鹿児島県茶市場に蓄積された単価や栽培管理等の情報から収益性に関与する栽培管理を探索した。単価と収量には反比例の関係があった。粗収益には芽数と摘採日が,単価と収量には更新樹高の影響が大きかった。栽培管理等を入力情報とした芽数と摘採日のニューラルモデルの精度は高かった。また,芽数と摘採日には品種の影響が大きく,栽培管理では最終摘採時期が影響した。荒茶中全窒素含有率には被覆期間の影響が大きく,施肥窒素量の影響は小さかった。生産現場で得られるデータを活用した茶生産の可能性が示唆された。