CHEMOTHERAPY
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新合成ペニシリンApalcillin (PC-904) による白血病患者難治性重症感染症の治療
中村 徹笹田 昌孝田嶌 政郎内田 三千彦山本 孝吉沢田 博義内野 治人樋口 富彦
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1979 年 27 巻 4 号 p. 689-695

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抄録

Apalcillin (PC-904) はグラム陰性桿菌を始めとする各種微生物, とくに緑膿菌に対し強い抗菌活性を有する新規の広範囲抗生物質であり, 白血病患者 (単球性白血病2例, 赤血白血病1例, 急性リンパ性白血病1例, 慢性単球性白血病1例, 急性単球性白血病1例) 6例における7回の感染エピソードに本剤を1日3~109点滴静注により3~18日間投与し, その効果を観察した。
起炎菌は6例中3例から分離され, クレブジェラおよびシュードモナス属のものであった。
総合臨床効果は著効2, 有効2, 無効1, 効果不明2 (有効率57%) であった。副作用として投与中に下痢が1例と下痢・無尿を来たした者が1例みられたが, 前者は投与中止により, 後者は投与中止後人工透析により消失した以外とくに問題はなかった。
本剤は白血病患者に合併する弱毒性グラム陰性菌感染症の治療に有用であると思われる。
近年, グラム陰性菌, とくにPseudomoms aeruginosaを対象とする種々のPenicillin系薬剤 が開発されつつあるが, 最近, 住友化学工業株式会社研究所で開発された半合成Penicillin製剤の Apalcillin (PC-904) は, Ampicillinのamino基に4-hydroxy-3-carboxy 1-1, 5-naphthyridineを導入した化合物で, Pseudomomasをはじめとする多くのグラム陰性菌に対して, Gentamicinに匹敵する強い抗菌力を持つと共に, グラム陽性菌に対してもCarbenicillinと同程度, あるいはそれ以上の抗菌力を示すことが認められている。本剤はその広い抗菌スペクトラムと, 強い抗菌力によって各科領域の感染症に対する有用性が確立されつつある。
内科領域における感染症として重要な位置を占めるものに急性白血病がある。本症においては白血病細胞の侵襲による顆粒球の減少や顆粒球の機能異常が認められ, とくに化学療法後にみられる高度の顆粒球減少時にしばしぼ難治性重症感染症の合併が認められ, Pseudomoms, Klebsiella, E.coliなどを起炎菌とする場合が多いことが知られている。
我々は, 各種抗生物質の大量併用療法ににより, 白血病患者の難治性重症感染症の治療を試みてきたが, 今回PC-904を6例の白血病患者に7クール使用する機会を得たのでその成績を報告する。

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© 社団法人日本化学療法学会
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