1980 年 28 巻 4 号 p. 589-593
実験小動物において組織液中の抗生物質濃度を測定することは, 組織液を採取する適当な手段に乏しい現状では容易でない。そこでラット背部にgranuloma pouchを作成し, そこに貯留する浸出液が代替組織液として応用しうるかどうかを, 血清蛋白結合率が異なるβ-lactam抗生物質を用いて検討した。その結果, 抗生物質の浸出液内への移行様式は, 生理的組織液を用いて実験された既知の成績とほとんど一致した。また, 抗生物質の浸出液中レベルは起炎後一定期間内で実験する限り, 炎症反応の進行に影響されなかった。浸出液中の総蛋白含量は組織液のそれに等しかった。これらの結果は, 組織液内抗生物質濃度を測定する手段としてgranuloma pouchに貯留する炎症浸出液が組織液の代替体液として応用しうることを示唆する。