CHEMOTHERAPY
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泌尿器科領域の感染症に対するCeftizoximeの基礎と臨床的検討
鈴木 恵三
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1980 年 28 巻 Supplement5 号 p. 629-650

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抄録

新しいセファロスポリン系抗生物質Ceftizoximeの試験管内抗菌力を, グラム陰性桿菌100株について検討した。対照薬剤としてCefamandoleを用いた。とくに強い抗菌活性を示した菌種は, E.coli, K.pneumoniae, P.vulgaris, P.rettgeriで, その抗菌力はCefamandoleよりおよそ5~6管程度強いが, 菌株によっては10管以上のものが認められた。このうちとくに対照薬と大きな抗菌力の差があっためは, K.pnoumonilae, P.vulgaris, P.roftgeriで, 106cells/ml接種で大半が≦0.05 μg/mlときわめて低いMICを示した。P. morgaiiでは上配菌種よりややMICは高いが, それでも大半が≦0.1μg /mlであった。S.marcescensでは, Cefamandoleに比して明らかに抗菌力は優っているが, 先の菌種よりMICは高く, 3.13~50μg/mlであった。E.cloacaeでは, 多少抗菌力の優る株もみられたが, 多くが耐性を示した。P.aeruginosaには, 12.5~100μg/mlのMICであった。
吸収, 排泄について2名の健康成人と6名の入院患者で検討した。健康成人にCeftizoxime 500mgをone shot静注すると, 血清中濃度は15分後ピーク値43.4μg/mlに達し, 以後急速に減少して6時間後にはほとんど消失した。6時間までの尿中回収率は91.0%であった。入院症例のうち, 中等度腎機能障害2名に250mgを投与した結果, 明らかな排泄遅延が認められた。腹膜透析を行っている高度の腎障害例では, 250mg投与で血清中濃度が約300μg/mlに達した。
前立腺液内への移行を9名, 14検体について測定した。1g静注後1時間の前立腺液内濃度の平均は1.68μg/mlで, 対血清中濃度比は, 0.054であった。2g静注後1時間では, 5.58μg/mlでdose responseがみられた。
臨床検討症例は合計30例である。慢性複雑性尿路感染症18例に対する治療は1日0.5~2.Og, 5~8日間で行ない, UTI薬効評価基準で70.6%, 主治医の判定では78.8%と優れた成績であった。腎盂腎炎4例を含めた急性単純性尿路感染症5例は, すべて著効を示した。尿道炎6例のうち, 淋菌性の4例には, 1日0.5~1gのone shot静注ですべて優れた反応をみたが, 非淋菌性の2例には効果を認めなかった。急性副睾丸炎の1例には有効であった。
副作用では, 全症例で自覚的異常をみた例はなかった。臨床検査値では, 肝機能と腎機能の値に上昇を認めたものが2例ずつあったが, いずれも軽度で, 中止後正常に復した。
Ceftizoximeは, 既存のセファロスポリン系抗生物質にみられない特長を有する優れた注射製剤であり, 安全度も高い薬剤であると考えられた。

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© 社団法人日本化学療法学会
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