CHEMOTHERAPY
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AM-715に関する基礎的・臨床的研究
大久保 滉岡本 緩子右馬 文彦上田 良弘前原 敬悟小田 真間瀬 勘史牧野 純子
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1981 年 29 巻 Supplement4 号 p. 320-334

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抄録

今回, 杏林製薬中央研究所で開発されたAM-715 (quinolinecarboxylic acid) の抗菌作用, 体内分布および臨床症例に対する効果を検討して, 次のような結果を得た。すなわち, 感受性についてはStaphylococcusaureusに対してnalidixic acid (NA), pipemidic acid (PPA) およびpiromidic acid (PA) のどれよりもMICが優れていた。グラム陰性桿菌 (Klebsiella, E.coll, Proteus mirabilis, Serratiamarcescens, Proteus spp., Enterobaca cloacae, Acinetobacter, Citrobacter spp.およびPselldomonasaeruginosa) についても同様に検査を行ったが, 比較薬剤のうち, 最もよい感受性を示した。
健康成人4名に, 空腹時にAM-715 200mgを内服させて吸収, 排泄を調べた。投与後の血中濃度のピークは1~2時間日 (0.25~0.46μg/ml) にあり, 尿中回収率は平均41.2%であった。
臨床症例19例 (気道感染症5例, 尿路感染症11例, 大腸炎, 胆嚢炎および虫垂炎各1例) に使用した。その結果, Serratia marcescensによる慢性気管支炎の急性増悪, パルーン・カテーテル留置中の慢性膀胱炎 (EnterobacterProleus mirabilisを検出) の各1例には無効, 亜急性虫垂炎の1例はやや有効で, 慢性膀胱炎の1例は消化器症状 (悪化, 腹部膨満感) をきたし, 1日間で本剤を中止し, 判定不能であったが, 他の15例では有効と判定された。副作用は, 上記の1例を除き, 他の18例には認められなかった。
以上の成績から.本剤は軽症の感染症, 特に尿路感染症には使用する価値のある経口抗菌剤と考えられる。

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© 社団法人日本化学療法学会
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