抄録
新しいCephamycin系抗生物質T-1982について産婦人科領域で検討を行ない, 以下の結果を得た。
T-1982 1.0gを肝腎機能正常な婦人患者に静注した場合の血清中濃度は30分値105μg/ml, 1時間値71.5μg/ml, 8時間値7.6μg/mlで半減期1.86時間であり, 同患者の尿中排泄率は8時間内73.88%で, その55~62%は2時間以内に排泄された。
T-1982 1.0g静注後の臍帯血, 羊水中移行はすみやかで, 臍帯血清中には5分後で9.2μg/ml, 29分後で13.4μg/ml, 48~55分で最高値16.3μg/mlの移行が認められた。羊水中には29分で1.2μg/ml, 48~55分で11.7μg/ml, 4時間33分で15.4μg/mlが認められた。母体投与後出生した新生児移行濃度は投与後出生までの時間と臍帯血清中濃度に比例し, 1.8~892μg/mlが出生直後の新生児から検出され, 蓄積傾向はなかった。
また, 産褥婦に1.0g静注した場合の母乳中移行はごく微量であった。
臨床試験では子宮全別手術後の子宮労結合織炎2例, 子宮内膜炎兼附属器炎1例, 産褥熱1例, バルトリン腺膿瘍1例, 乳腺炎2例, 急性腎盂腎炎1例合計8例の産婦人科的感染症に対し, 1回1.0g 1日2回静注または点滴静注の投与法で全例に効果を認め, 副作用はなかった。
以上の諸成績からT-1982の産婦人科領域における有用性を認めた。