CHEMOTHERAPY
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褐藻Sargassum fulvellum由来のアルギン酸ナトリウム塩の抗腫瘍性とその作用機作
藤原 三知雄小宮山 寛機梅沢 巌名雲 照一
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1984 年 32 巻 12 号 p. 1004-1009

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抄録

褐藻ほんだわら (Sargassum fulvellum) の熱水抽出物から分離精製したアルギン酸ナトリウム塩 (分子量: 29,000, M/G比: 2.84) のマウス腫瘍に対する抗腫瘍性を調ベた。その結果,Sarcoma-180およびEhrlich腹水腫瘍に対して. 50mg/kgの投与重でILS (lncrease in life span) がそれぞれ, 141,222%といずれに対しても抗腫瘍効果が認められた。さらに, IMC腫瘍に対しても, 12.5および50mg/kgの投与量で, ILSがそれぞれ, 205%, 215%以上と顕著な抗腫瘍性が認められた。しかし, Meth-AとP388に対しては延命効果が認められなかった。次にアルギン酸ナトリウム塩の直接的な殺細胞作用を調べるために, in vitroで増殖しているHeLa細胞に1,000μg/mlの濃度で作用させたが, 増殖抑制作用は認められなかった。そこでin vivoでアルギン酸ナトリウム塩のbiological response modifierとしての性質について検討した。まずアルギン酸ナトリウム塩を投与したマウスの腹腔浸出付着細胞 (PEC) の腫瘍細胞に対する作用を調べた。即ち, 100mg/kg投与し4日後にマウスのPECを集めEL-4細胞の3H-thymidineの取り込みを調べたところ, ほぼ完全な取り込み阻害がみられた。また, Cytblytic活性を調べるために, あらかじめ3H-uridineでラベルしたEL-4細胞にPECを作用させたところ, コントロールの約2倍の3Huridineのreleaseがみられた。次に, アルギン酸ナトリウム塩のInterferon (IFN) 誘起能を調ベるために, マウス尾静脈に投与して血中のIFN量を測定したところ, 200mg/kgの投与で, 1時間後に最も高い活性が認められた。
以上の結果から, アルギン酸ナトリウム塩の抗腫癌性は, マクロファージの活性化, およびインターフェロンの誘起能等による宿主介在性によるものであることが示唆された。

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