CHEMOTHERAPY
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新合成ペニシリンTA-058の一般薬理作用
石田 柳一岩澤 義郎
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1984 年 32 巻 Supplement2 号 p. 171-179

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抄録

新しい半合成ペニシリンTA-058の一般薬理作用を検討した。
TA-058は, マウス, ラットに1,000mg/kgまでi. v. しても, 筋弛緩, 麻酔増強, 抗痙攣, 鎮静, 鎮痛, 体温低下, 下熱などの中枢作用を示さず, 脳波 (ウサギ, 1,000mg/kg), 脊髄反射電位 (ネコ, 300mg/kg) に影響をおよぼさなかった。
麻酔ラットにTA-0581,000mg/kg i. v. すると, 血圧上昇, 心拍数増加が認められたが, 20%以下の軽度な変化であった。麻酔犬に300mg/kg i.v.しても, 血圧, 心拍数, 腎血流量に変化は認められなかったが, 呼吸数, 大腿動脈, 総頸動脈血流量の軽度, 一過性の増加が観察されたが, これらの変化は投与薬液の浸透圧が高かった (約1, 500 mOsm) ために生じたものであることが示された。TA-058を1,000mg/kg 1回, または300mg/kg/day 8日間, いずれもs.c.すると, 5時間尿中のNa, Cl排泄量が軽度ながら有意に低下した。連続投与期間中, 体重曲線に変化は認められず, 慢性毒性試験などでも腎障害は認められていないので, 重篤な副作用とは考えられない。1,000mg/kgで胃液分泌量, 遊離塩酸濃度が軽度低下した以外, 消化器系に対して作用せず, 消炎作用, 局所麻酔作用, 抗Ach, 抗ヒスタミン (H1, H2), 節遮断, α 遮断, パパベリン様などの作用も示さなかった。
以上, TA-058の一般薬理作用を検討した結果, 特に注目すべき作用は見い出されなかった。

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