CHEMOTHERAPY
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TA-058の基礎的, 臨床的検討
沢江 義郎草場 公宏柏木 征三郎小野 亨雄桶田 俊光岡田 薫熊谷 幸雄
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1984 年 32 巻 Supplement2 号 p. 374-389

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抄録

新しく開発された注射用広域性ペニシリン系抗生物質であるTA-058について, 基礎的, 臨床的検討を行い, つぎのような結果が得られた。
1) TA-058の抗菌力を九大第一内科入院患者由来の臨床分離菌について測定したところ, TA-058のMICが12.5μg/ml以下の占める割合は, S.aureus 89%, S.faecalis 85%, E.coli 37%, K.pneumoniae 0%, Enterobacter sp. 63%, S.marcescens 4%, Proteus sp.79%, P.aeruginosa 8%であった。これらをAMPCの抗菌力と比較すると, TA-058がグラム陽性球菌では2段階劣るが, グラム陰性桿菌では2段階ないしそれ以上優れていた。
2) TA-058の2gを健康成人3名に静注したときの血清中TA-058濃度の平均値は, 注射終了直後283.3μg/ml, 6時間後3.3μg/mlであり, T1/2 (β) 1.3hr., AUC 202μg/ml・hr.であった。このときの尿中排泄率は6時間後までに66%であった。慢性腎不全例では尿中排泄率が著明に低下し, T1/2 (β) が非常に延長した。
3) 肺炎9例, 気管支炎3例, 肺結核1例, 膀胱炎7例, 腎盂腎炎4例, 敗血症および細菌性心内膜炎3例, 髄膜炎, 関節炎, 肛門周囲膿瘍の各1例, 計30例にTA-058を1日1~8g, 3~55日間使用した。臨床効果としての有効率は呼吸器感染症54.5%, 尿路感染症72.7%, その他66.7%で, 全体として64.3%であった。細菌学的にはK.pneumoniae, 非醗酵菌によるものに無効例が多かつた。副作用として1例に血管痛が認められたのみで, 臨床検査成績でGOT, GPT上昇2例, ALP上昇1例が認められたが, いずれも肝障害のある症例であった。

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