抄録
新しいPenicillin系薬剤のTA-058が試供されたので臨床症例10例に使用し, その効果をみると共に本剤4gとCarbenicillin (CBPC) 4gをクロスオーバー法で健康成人4名に1時間で点滴静注し, 血中および尿中濃度を測定し, 尿中回収率を調べた。
T1/2 (β) は, TA-058の場合84.0分, CBPCでは60.0分, ピーク値は, 各々224.4μg/ml, 242.6μg/mlであった。尿中回収率は8時間までで, 本剤が59.0%であるのに対し, CBPCでは81.8%と差が認められた。
次に臨床摘出標本の包皮, 副睾丸, 睾丸内の本剤濃度を1g静注後しらべたが, 副睾丸, 睾丸, 包皮の順に濃度が高く, 血中濃度の1/2~1/5と比較的高濃度を示した。
臨床的検討では慢性複雑性膀胱炎5例と慢性複雑性腎盂腎炎5例に1日2g, 分2で5同間点滴静注で使用したが, UTI薬効評価基準によって臨床効果を判定し得たものは8例で, 著効1例, 有効1例となり有効率は25%であった。細菌学的効果は11株中3株が消失し, 除菌率は27.3%であった。
また, GOT, GPT, Al-Pの一過性上昇が1例に認められた。
本剤はin vitroよりin vivoにおける殺菌効果が強いとされているが, β-lactamaseに弱く, β-lactamase産生菌が多いと思われる泌尿器科領域の慢性複雑性感染症に対してはβ-lactamase inhibitorの併用が必要と思われた。