抄録
新しく開発された合成ペニシリン剤TA-058について基礎的・臨床的検討を加えた結果, 次のような結論を得た。
1. 標準株20株のうち, グラム賜性菌に対して優れた抗菌力を示し, グラム陰性桿菌にも比較的良好な抗菌力を認めた。教室保存尿路由来のABPC耐性E.coli 95株のうち, 95%は MIC 100μg/ml以上であったが, botsus属33株に対してほ優れた抗菌力を示した。
2. 本剤1.0g静脈内投与後2時問までに50%。以上が尿中より回収され, 5,000μg/ml以上の高い尿中濃度を示し, 12時間までに約80%が回収された。
3. Bioautogramを用いた検討では静注6時間後の尿よりAMPCと考えられるspotが認められ, TA-058の2~4%に相当した。高速液体クロマトグラフィーにおいても静注8時問後の尿よりAMPCと考えられるpeakが認められた。
4. 複雑性尿路感染症8例に対し, TA-058を1回1.0g, 朝夕2回5日間連続投与を行った。総合臨床効果は有効2例で総合有効率は25%でありた。膿尿に対する効果は正常化2例 (23%), 不変6例 (75%) であった。細菌尿に対する効果は菌交代3例 (38%), 不変5例 (62%) であった。
5. 複雑性尿路感染症8例から分離された12株のうち, 7株 (58%) が投与後に消失した。
6. 副作用は認められなかった。また, 薬剤投与に関連した臨床検査値の悪化も認められなかった。