抄録
林野火災の延焼には風と地形が大きく関係する。特に, 風向によって主延焼方向が変化するため, 延焼区域を予測するにあたっては風向と地形の関係は重要である。本論文は, 2002年4月に発生した岐阜県各務原市での林野火災をおもな事例として解析を行った。解析の考え方は, 風に影響を及ぼすと考えられる地形要素を用いて対象とする地域の地形分類図を作成すれば, この地形分類図は, その地域の風力の分布を表現する風力分布図を示すことになる。したがって, 風力分布図より風の流れの様子がわかり, それにより火災の延焼区域が予測できるはずであるというものである。本論文はこの考え方にしたがって解析し, 林野火災の延焼に及ぼすおもな地形要素は, 「地形の形状」, すなわち, 険しい地形か, なだらかな地形かを表現する地形要素と, 「地形が傾斜している方向を表現する地形要素」であることを提示した。また, 風向が変化した場合の地形の効果 (すなわち, 風向と地形の複合影響) を定め, それに基づき解析を行った。その結果, 風向は延焼区域を予測する際の大きな要素であり, 風向の変化に応じて予測することが火災の延焼区域予測においては重要であることを実証した。