CHEMOTHERAPY
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健康成人志願者と腎機能障害患者におけるAspoxicillin静注時の薬動力学的研究
岩田 次郎高橋 好夫藤岡 博文高瀬 幸次郎竹沢 正気中野 赳竹沢 英郎山崎 義久多田 茂
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1985 年 33 巻 9 号 p. 778-784

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抄録

健康成人志願者6名と腎機能障害患者24名の計30名にAspoxicillin 1gを急速静注した際の体内動態と種々の腎機能患者への最適投与方法について検討を行なった。クレアチニンクリァランス (Ccr) が10ml/min以下の高度腎機能障害患者とCcrが75ml/min以上の腎機能正常者を比較すると, 高度腎機能障害患者では血清中濃度は本剤投与1時間後より有意に高値となり, 6時間値は220μg/mlと腎機能正常者 (1.7μg/ml) の約13倍の高値を示し, 24時間累積尿中回収率は6.1%で, 腎機能正常者 (67.3%) の9.1%に低下していた。血清中濃度半減期は乳2±4.0時間で, 腎機能正常者 (1.5±0.2時間) の約5倍に延長していた。
次にCcr, 腎クリアランス (CR), 体クリアランス (CB) の平均値を比較すると, 腎機能正常者ではそれぞれ98.8ml/min, 112.9ml/min, 167.5ml/minであるのに対し, 高度腎機能障害患者ではそれぞれ3.8ml/min, 2.8ml/min, 43.2ml/minとCcrやCRの著しい低下に比ベ, CBの低下は約1/4と軽度であった。またβ相における血清中濃度半減期, CB, CRはCcrとの相関関係がみられた。血液透析患者3例に非透析時と透析時に本剤19を静注した際の血清中濃度を比較すると, 透析4時間後の血清中濃度は非透析時よりも平均12.3μg/ml低下していた。以上の結果より本剤の主な排泄経路は腎であり, 腎機能低下が高度になると腎からの本剤排泄が低下し, 腎外排泄が増加すると考えられた。腎機能正常者での本荊投与方法は19を8時間間隔でよいが腎機能低下に伴い投与間隔を延長するか, 投与量を減少させる必要があり, 血液透析患者では透析後19を1日1回投与するのがよいと思われた。

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