CHEMOTHERAPY
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術後感染症に対するCefotaximeとCeftizoximeの比較対照試験
酒井 克治藤本 幹夫上田 隆美他
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1986 年 34 巻 4 号 p. 331-358

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抄録

術後感染症に対するCefotaxime (CTX) の有効性, 安全性ならびに有用性を客観的に評価する目的で, Ceftizoxime (CZX) を対照薬とし, 両薬剤とも1日2g点滴静注投与によりwell-controlled study法による比較対照試験を実施し, 以下の成績を得た。
1. 効果判定委員会判定による総合臨床効果は, 術後創感染症例 (以下A層とする) ではCTX群84.5%(60/71), CZX群75.7%(56/74), また術後腹腔内感染症例および術後死腔内感染症例 (以下B層とする) ではCTX群73.7%(42/57), CZX群68.4%(39/57) の有効率であり, A層, B層とも両薬剤群間に有意の差はなかった。
2. 主治医判定による最終全般的改善度はA層でCTX群76.1%(54/71), CZX群74.3%(55/74), B層ではCTX群64.9%(37/57), CZX群57.9%(33/57) となり, A層, B層とも両薬剤群間に有意の差はなかった。
3. 効果判定委員会判定による細菌学的効果は症例別菌消失率において, A層でCTX群69.5%(41/59), CZX群52.6%(30/57) となり, CTX群が高い傾向を示した。一方, B層においてはCTX群52.2%(24/46), CZX群42.6%(20/47) となり, 両薬剤群間に有意の差はなかった。投与前検出菌の消長からみた菌種別消失率においては, A層でCTX群73.3%(66/90), CZX群56.8%(54/95), B層でCTX群51.4%(37/72), CZX群33.0%(31/94) となり, A層, B層ともにCTX群が有意に優れていた (P<0.05)。
4. 副作用はCTX群ではみられず, CZX群で150例中4例 (2.7%) にみられた。臨床検査値異常例は, CTX群で1.4%(2/144), CZX群で4.1%(6/147) にみられた。しかし, 副作用および臨床検査値異常とも両薬剤群間に有意の差はなかった。
5. 主治医判定による有用性は, A層でCTX群66.7%(46/71), CZX群58.3%(42/74), B層でCTX群54.5%(30/55), CZX群42.3%(22/52) となり, 両薬剤群間に有意の差はなかった。
以上の結果よりCTXはCZXと同様に術後感染症の治療薬として有用性の高い薬剤であると考えられた。

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