CHEMOTHERAPY
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慢性気道感染症を対象とした化学療法剤の効果判定に関する研究
松本 慶蔵高橋 淳山本 眞志永武 毅力富 直人大石 和徳宇塚 良夫宍戸 春美
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1986 年 34 巻 4 号 p. 316-330

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抄録

慢性気道感染症に対する化学療法剤の評価基準を作成し, 168症例について, 主治医判定, 以前報告した基準5) (旧基準) との比較検討を行なった。薬効評価は化学療法剤使用7日後とし, 14日後判定も可能であった22症例についてはその検討も加えた。効果判定様式は, 判定指標を, 1) 起炎菌の消長, 2) 喀痰量, 性状, 3) 発熱, 4) 白血球数, 5) CRP, の5項目とし, それぞれに重みを付け効果判定一覧表 (新基準) を作成した。
対象症例は, 当教室が治験段階で提出したケースカードから慢性気道感染症に関するものを無作為に選び, 主治医判定はそのときの判定を使用した。
主治医判定と新基準の一致率は72.9%, 主治医判定と旧基準では68%, 薬剤効果を有効群 (著効と有効), 無効群 (やや有効と無効) に大別した比較では, 主治医判定と新基準で一致率94.6%, 主治医判定と旧基準で91%と良い一致率を示した。しかし解析が困難なため, 主治医判定によらざるを得ない症例が2例存在した。疾患別の検討では, び漫性汎細気管支炎での一致率が58.8%と慢性気管支炎, 気管支拡張症の77%, 76.9%に比べ低く, 今後の問題と考えられる。7日後判定と14日後判定の比較では22症例中, 21例で評価に変動がなく, わずかに, 有効から著効へ変化した1例が認められたのみであり, 慢性気道感染症においては7日後判定が可能であることが示唆された。
また慢性気道感染症における化学療法の適応, 薬剤の持つ “切れ味” についても言及した。

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© 社団法人日本化学療法学会
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