CHEMOTHERAPY
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T-3262の臨床第I相試験
中島 光好植松 俊彦金丸 光隆保田 隆渡辺 泰雄田井 賢
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1988 年 36 巻 Supplement9-Base 号 p. 158-180

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抄録

健康成人男子24名を対象にT-3262の臨床第1相試験をおこなった。空腹時単回投与試験は37.5mgより開始し, 75, 150, 300mgまで増量した。食事の影響についてはcrossover法で150mg単回投与試験で検討した。連続投与試験は1回150mg1日3回, 7日間にわたり計19回食後投与を行なった。これらの試験から以下の成績を得た。
連続投与試験の1例に下痢が出現し, 3日間計8回投与で本剤の投与を中止した。また, 本被験者で尿中β2-ミクログロブリンの軽度上昇を認めたが2週間後の検査で正常域に復していた。この症例以外には自他覚所見, 理学所見, 心電図, 臨床検査値上に, 異常は認められなかった。
T-326237.5, 75, 150, 300mg空腹時単回投与試験の血中濃度推移にはdose responseが認められ, 平均最高血中濃度は1~2.5時間にあり, それぞれ0.16, 0.29, 0.37, 0.8μg/mlで, 血中濃度半減期は3.14~3.86時間であった。尿中排泄率は投与量の増加に伴ない減少し, 投与24時間までの排泄率はそれぞれ47.9, 40.2, 28.0, 25.2%であった。食事の影響の検討では食後投与の方が空腹時よりCmax, が高く, AUCも1.4倍の値を示した。血中濃度半減期は食後3.59時間, 空腹時3.77時間とほぼ同じであった。1日3回, 7日間の連続投与試験で血中濃度の推移をみると3~4日目よりプラトーに達し, 尿中排泄からも蓄積性は認められなかった。
以上の成績より, T-3262は安全性において特に問題はなく, 体内動態の検討より, 本剤の各種細菌に対する抗菌力を考えると, T-3262は臨床評価を行なうに値するものと考えられる。

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