CHEMOTHERAPY
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腎機能低下例におけるT-3262の体内動態
前田 浩志藤井 明荒川 創一守殿 貞夫浜田 勝生宮崎 重原 信二前窪 治
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1988 年 36 巻 Supplement9-Base 号 p. 187-194

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抄録

健康人 (I群: Ccr≧80ml/min), 腎機能低下例 (II群: 80>Ccr≧50, III群: 50>Ccr≧20, IV群: 20>Ccr), および透析患者 (V群) における, ニューキノロン剤T-3262の体内動態および血液透析または吸着による除去効果を検討し, 以下の結果を得た。
1) T-3262150mg単回投与後の血中最高濃度はI群~IV群は0.62~0.83μg/mlで, V群では1.60~1.65μg/mlであった。血中半減時間はI群3.85時間, II群4.0時間, III群9.8時間, IV群10.5時間であった。
2) 尿中濃度の最高値および12時間までの尿中回収率はI群では102.4μg/ml, 40.81%, II群81.0μg/ml, 38.22%, III群25.8μg/ml, 14.83%, IV群15.16μg/ml, 2.82%であった。
3) T-3262を溶解したヒト保存血液で満たされた閉鎖回路内にハローファイバー一型人工腎臓 (AM-10 (R)) を介在させ, 150ml/minで灌流したときの血中半減期は0.218~0.238時間であった。同回路に活性炭吸着筒 (DHP-1 (R)) を介在させた場合の半減期は0.109時間であった。
4) 透析患者においては, 5時間透析により, 透析液中に本剤投与量の7.31~8.33%が回収され, 血中半減期も遷延しており, 3) の結果とは大きく異なっていた。
以上より, 腎機能低下例に対する本剤の投与量はその程度に応じて設定されるべきであり, 血中濃度の急激な上昇時には血液透析, 活性炭吸着が多少とも有用と考えられた。

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