CHEMOTHERAPY
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嫌気性菌に対する新ピリドンカルボン酸系抗菌剤T-3262の抗菌力
加藤 直樹武藤 吉徳渡辺 邦友上野 一恵
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1988 年 36 巻 Supplement9-Base 号 p. 59-67

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抄録

ニュー・ピリドンカルボン酸系抗菌剤であるT-3262の嫌気性菌に対する抗菌力をofloxacin (OFLX), norfloxacin (NFLX), pipemidic acid (PPA) を比較薬剤として検討した。抗菌スペクトラムの検討には29菌株 (28菌種) の参考菌株 (reference strain) を用い, 臨床分離株に対する抗菌力には1983~86年に分離された204菌株 (10菌種) を用いた。in vitroにおける耐性獲得試験は増量的継代法により行った。また, T-3262の7日間連続投与後のマウス盲腸内でのClostridium diffficileの異常増殖試験を行った。
T-3262はGram陰性, 陽性の嫌気性菌に対し幅広い抗菌力を有していた。新鮮臨床分離株のBacteroides fragilisに対しては, T-3262は使用薬剤中最も強い抗菌力を示し, これらの株は0.78μg/ml以下の薬剤濃度で発育が阻止された。T-3262のその他の臨床分離株に対する抗菌力も他のピリドンカルボン酸系抗菌剤より優れていた。T-3262のB. fragilisPeptostnptococcus magnusに対するMICとMBCの値は非常に接近しており, このことは, 本剤がこれらの菌種に対し殺菌的であることが示唆された。耐性獲得試験においては, B. fragilisに対するT-3262のMICの上昇は8代継代まで認められなかった。T-3262投与後のマウス盲腸内からC. difficileはまったく検出されなかった。

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© 社団法人日本化学療法学会
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