CHEMOTHERAPY
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新合成化学療法剤, T-3262のin vitroおよびin vitro抗菌力
西野 武志高畑 正裕大槻 雅子
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1988 年 36 巻 Supplement9-Base 号 p. 68-88

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抄録

新しく合成された化学療法剤T-3262のin vitroおよびin vivo抗菌力をciprofloxacin (CPFX), norfloxacin (NFLX) およびofloxacin (OFLX) を比較薬として検討し, 以下の結果を得た。
1) T-3262はグラム陽性菌群, グラム陰性菌群および嫌気性菌群に対し広範囲の抗菌スペクトルを有しており, その抗菌力はグラム陽性菌群および嫌気性菌群に対しては比較薬剤中最も優れており, グラム陰性菌群に対しては, norfloxacin, ofloxacinより優れていた。また腸内細菌科及び Pseudomonas aeruginosa (P. aeruginosa) に対してはciprofloxacinと同等かそれより若干弱い抗菌力を示した。
2) 臨床分離株に対する感受性分布においてT-3262は嫌気性菌群, グラム陽性菌群, グラム陰性菌のAcinetobacter calcoaceticus, Branhamella catarrhalis等に対して最も優れていた。他のグラム陰性菌群に対してはCPFXとOFLXの中間程度の抗菌力を示した。
3) T-3262の抗菌力に及ぼす諸因子の影響ではStaphylococcus aureus (S. aureus), Escherichia coli (E. coli), Klebsiella pneumoniae (K. pneumoniae) , 及びP. aeruginosaを用いて検討したが, いずれの場合も培地の種類, 馬血清添加, 接種菌量の影響は認められなかった。培地pHがアルカリ側の時に抗菌力が増強された。
4) S. aureus, E. coli, P. aeruginosaの増殖曲線に及ぼすT-3262の効果を検討した結果, dose responseのある作用がみとめられ, いずれの場合も1MIC以上で殺菌的に作用した。
5) E. coli, P. aeruginosaにT-3262を作用させた時の形態変化を観察したところE. coliでは菌体は1/2~1/4MIC濃度以上で伸長化したがP. aeruginosaでは菌体の伸長化は認められずスフェロプラスト様構造及び溶菌像が観察された。
6) マウス実験的全身感染症に対する治療効果をS. aureus, Streptococcus pneumoniae, Streptococcus pyogenes, E. coli, K. pneumoniae, P. aeruginosaを用いて検討したところ, グラム陽性菌感染症においては他剤より遙かに優れた治療効果を示し, E. coliではOFLXと同等, K. pneumoniaeではCPFXと同等の治療効果を示した。P. aeruginosaに対しては全比較薬剤より優れた治療効果を示した。また何れの菌株においてもNFLXより優れていた。
7) マウス実験的呼吸器感染症に対してT-3262はCPFX, NFLXより優れ, OFLXと同等の優れた治療効果を示した。

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