日本化学療法学会雑誌
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モルモット輸精管の収縮反応におよぼす合成penicillinの影響
吉田 正英小枝 武美
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1995 年 43 巻 7 号 p. 683-689

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抄録

合成penicillinであるampicillin (ABPC) およびcloxacillin (MCIPC) ならびにこれらpenic-nの母核である6-aminopenicillanic acid 6-APA>の摘出モルモット輸精管の収縮反応におよぼす影響について研究した。輸精管は, 主に交感神経の支配を受けている。Noradrenalineとadenosine triphosphate (ATP) は, 輸精管の交感神経から同時に放出され, 組織の筋にco-transmitterとして作用することが知られているが, 外来性にnoradrenalineを加えても, 外来性にATPを加えても, 輸精管は収縮反応を示す。ABPC (5×10-49/ml~2.5×1r39/ml) および6-APA (5×10-4g/ml~2.5×10-3g/ml) は, 電気的神経刺激 (50volt, 0.5msecの矩形波にて, 5Hzの頻度で5sec間刺激) により惹起される輸精管の収縮反応の高さを明らかに増強したが, MCIPC (5×10-4g/ml~2.5×10-3g/ml) は, その収縮反応の高さを明らかに減弱させた。ABPC (2.5×10-3g/ml)および6-APA (2, 5×10-3g/ml) は, 電気的筋刺激 (tetrodotoxin存在下で, 50volt, 50msecの矩形波にて, 5Hzの頻度で5sec間刺激), 外来性に加えたnoradrenalineおよびATPにより惹起される収縮反応の高さを明らかに増強したが, MCIPC (2.5×10-3g/ml) は, それら収縮反応の高さを明らかに減弱させた。MCIPC (2.5×10-3g/ml) の電気的神経刺激により惹起される収縮反応の高さに対する減弱効果だけは, 正常Krebs液で洗浄しても完全には消失しなかった。上記の事実より, ABPCおよび6-APAの輸精管収縮反応の高さ増強効果は, 輸精管壁内の筋肉に対するこれらpenicilline系被験薬物の直接作用に起因しており, これらpenicilline系被験薬物の輸精管壁内神経 (sympathetic) に対する作用は考え難い。なお, このような収縮反応の高さ増強効果は, 他の臓器ではまだ観察されていない特殊な効果である。MCIPCの輸精管収縮反応の高さ減弱効果は, 輸精管壁内神経 (sympathetic) に対するMCIPCの作用を完全に無視することはできないが, 主にMCIPCの輸精管壁内の筋に対する直接作用に起因するものと推定される。なお, 輸精管の収縮反応に対するABPCとMCIPCの作用態度の違いは, 両者の側鎖の相違によるものと思われる。

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