慢性下気道感染症に対するマクロライド系抗菌薬の有効性の機序は細菌と宿主の両方に対するものと考えられる。その宿主に対する作用の一つとしてサイトカイン産生への影響を知る目的で, erythromycin (EM) とclarithromycin (CAM) の投与による慢性下気道感染症での末梢血単核球分画のinterleukin (IL)-2産生能と血清IL-4の変動を検討した。IL-2産生能は慢性下気道感染症15例の末梢血から分離した単核球分画のCon Aによる刺激培養上清を用いRIA法で, 血清IL-4は同症17例の血清を用いELISA法で測定した。結果はIL-2産生能と血清IL-4は, EMまたはCAMの投与28日後に投与前に比べ有意な上昇を認めた。またEM長期投与例では投与期間とIL-2産生能の間には負の相関を認め, 投与期間が長い症例ほど健常例にみられる値に近い傾向がみられた。以上から慢性下気道感染症においてマクロライド薬はIL-2とIL-4の産生に影響をおよぼし, 本症に対する有効性の機序の一つである可能性が示唆された。