日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
呼吸器感染症に対するペネム系抗菌薬 ritipenem acoxilの基礎的検討ならびに臨床的検討
健山 正男普久原 浩稲留 潤我謝 道弘斎藤 厚草野 展周古堅 興子仲宗根 勇平良 真幸伊良部 勇栄宮城 護我喜屋 出親川 富憲
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 43 巻 Supplement3 号 p. 193-199

詳細
抄録

新しく開発された経口ペネム系抗菌薬ritipenem acoxil (RIPM-AC) について基礎的・臨床的検討を行ない, 以下の結果を得た。
1. 基礎的検討: 各種臨床分離菌株13菌種, 296株に対して微量液体希釈法にてritipenem (RIPM) の抗菌力を測定し, 代表的なβ-ラクタム系経口抗菌薬であるcefaclor (CCL), cefotiam (CTM), cefixime (CFIX), cefteram (CFTM), amoxicillin (AMPC) と比較した。RIPMは他のβ-ラクタム系経口抗菌薬5剤と比しmethicillin-susceptible Staphylococcus aureus (MSSA), Streptococcus pneumoiae, Enterococcus faecalis, Moraxella (Branhamella) catarrhalis, Escherichia coli, Enterobacter cloacae, Citrobacter freundii, Acinetobacter calcoaceticusに対して優れた抗菌力を示した。Haemophilus influenzae についてはCTMと, Klebsiella pneumoniae, Proteus mirabilis についてはCCLと, Serratia marcescens についてはCFTMと同等の抗菌力を示した。しかし, methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA), Pseudomonas aeruginosa に対する抗菌力は不十分であった。
2. 臨床的検討: 呼吸器感染症8例 (急性気管支炎4例, 肺炎2例, 慢性気管支炎の急性増悪2例) に対し, 本剤1回150~400mgを1日3回経口投与し臨床効果, 細菌学的効果, 副作用, 臨床検査値異常を検討した。臨床効果は, 判定不能の1例を除外した7例中1例が著効, 5例が有効, 1例がやや有効であった。細菌学的効果では, 2例よりH. influenzae, E. cloacae が分離され, 本剤投与後消失した。副作用は全例に認められなかった。臨床検査値異常では, GOT・GPT・s-Crの上昇, 好酸球増多が1例ずつの計2例に認められたが, いずれも軽度で臨床的な処置を必要としなかった。
以上のことから, 本剤は呼吸器感染症に対し有用な薬剤であると考える。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top