日本化学療法学会雑誌
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新規ペネム系経口薬ritipenem acoxilのウサギ感染モデル口腔組織移行に関する研究
佐藤 田鶴子阿部 葵石垣 佳希宮坂 孝弘
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1995 年 43 巻 Supplement3 号 p. 74-76

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抄録

Ritipenem acoxil (RIPM-AC) は新しいエステル型ペネム系経口薬で, 経口投与後・腸管で速やかに, 加水分解され, 活性本体であるritipenem (RIPM) として抗菌力を示すプロドラッグタイプの抗生物質である。本剤の体内動態を動物を用いて, 薄周平板ディスク法にて行った。New Zealandwhite種 (NZW種) ウサギを用い, ritipenem acoxilを20mg/kg経口投与させ, 口腔感染症に関連ある組織への移行を確認するとともに, 歯性感染症の主座になるウサギ下顎骨に佐藤一Heimdahl法にて感染を惹起させ, そのモデルについても本剤の移行に関する比較検討を行った。試料は血清をはじめ, 舌, 歯肉, 顎下リンパ節, 顎下腺耳下腺上顎骨, 下顎骨, 膿汁を対象とした。
血清中のRIPMのTmax (最高濃度到達時間) は感染群0.24時間で, 健常群はやや遅く, Cmax (最高血中濃度) は12.05μg/ml, 11.33μg/mlとかなり高い移行であった。組織については, 感染群ではTmaxは0.19~0.26時間で, Cmaxは0.74~7.15μg/gであった。舌や歯肉などの軟組織への移行は高く, 顎下腺, 耳下腺などの腺組織への移行がそれに次いでいた。
感染巣の形成された顎骨はそれに次いでいた。とくに下顎骨については, Cmaxは血中移行の約12%, AUCでは約3%の移行が見られた。しかし顎骨内に存在する本剤の膿汁中移行は血中移行より低いものの, 顎骨への移行を越えるものであった。
移行パターンとしては全体に血清移行も組織移行もほぼ類似しており, 感染群と健常群では, Tmaxは感染群の方が健常群に比較して早く, かっCmaxについては, 1.0~2.5倍移行が高かった。

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