日本化学療法学会雑誌
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新規マクロライド系抗生物質azithromycinの外科領域における基礎的・臨床的検討
中山 一誠他
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1995 年 43 巻 Supplement6 号 p. 284-298

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抄録

新しく開発されたマクロライド系抗生物質azithromycin (AZM) の外科領域における基礎的・臨床的評価を目的として, 全国18機関とその関連施設による共同研究を実施し, 以下の成績を得た。
1) 体内動態に関する検討: 500mg単回投与時の胆嚢組織への移行濃度は24時間後8.42μg/g, 48時間後3.92~10.4μg/gであった。胆汁中濃度は投与後2~5時間に最高濃度186~509μg/mlを示した。
2) 臨床的検討: AZMは250mg (力価) または500mg (力価) を1日1回, 3日間投与を中心に186例に投与された。除外・脱落7例を除いた179例が臨床効果の評価対象症例であり, その内訳は, 浅在性化膿性疾患85例, 乳腺炎13例, 肛門周囲膿瘍25例, 外傷・熱傷・手術創による表在性二次感染45例, 胆嚢炎・胆管炎6例, その他5例であった。
主な疾患群の有効率は, 浅在性化膿性疾患96.5%(82/85例), 乳腺炎76.9%(10/13例), 肛門周囲膿瘍84.0%(21/25例), 外傷・熱傷・手術創による表在性二次感染75.6%(34/45例) であり, 全体としては87.7%(157/179例) であった。
140例より分離された起炎菌241株の消失率は, グラム陽性菌90.1%(109/121株), グラム陰性菌85.7%(36/42株), 嫌気性菌93.6%(73/78株) であり.全体としては90.5%(218/241株) であった。
副作用は評価対象181例中6例に認められ, その内訳は消化器症状5例, 発疹1例であった。また, 臨床検査値の異常変動は5例に認められ, その内訳は好酸球の増多1例, S-GOT, S-GPTの上昇1例, S-GOT・S-GPT・γ-GTPの上昇1例, S-GPTの上昇1例, AL-P・γ-GTPの上昇1例であった。
以上の成績から, AZMは外科領域感染症において有用性の高い薬剤であると考えられた。

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