日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
Ciprofloxacin注射薬の前期第II相臨床試験
小林 宏行原 耕平熊澤 淨一
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 45 巻 10 号 p. 820-832

詳細
抄録

ピリドンカルボン酸系抗菌薬ciprofloxacin (CPFX) 注射薬による中等症以上の呼吸器感染症および複雑性尿路感染症に対する有効性および安全性について検討した。投与量は1日200 mg (分2) または400 mg (分2) を3~14日間点滴静注し, 以下の成績を得た。
1) 総投与症例148例のうち, 有効性評価対象例は126例 (内科領域, 泌尿器科とも63例), 安全性評価対象例は145例 (内科領域74例, 泌尿器科71例) であった。
2) 呼吸器感染症に対する臨床効果では, 肺炎・肺化膿症80.8%(21/26例), 慢性下気道感染症42.9%(15/35例), 全体で59.0%(36/61例) の有効率であった。他剤無効例に対する有効率は60.0%(12/20例) であった。1日投与量別の有効率は, 200 mg投与60.9%(14/23例), 400 mg投与57.9%(22/38例) であった。一方, 細菌学的効果における菌消失率は, 全体で62.3%(33/53株) であった。
3) 複雑性尿路感染症に対する総合臨床効果 (UTI薬効評価基準判定) は, 膀胱炎で54.5%(18/33例), 腎盂腎炎で57.1%(8/14例), 全例で55.3%(26/47例) の有効率であった。他剤無効例に対する有効率は60.0%(24/40例) であった。1日投与量別の有効率は, 200mg投与42.9%(9/21例), 400 mg投与65.4%(17/26例) であった。一方, 細菌学的効果における菌消失率は, 全体で80.0%(48/60株) であった。
4) 副作用は17例 (11.7%) に23件認められた。その内訳は過敏症状が7件, 消化器症状が5件, 神経症状が4件, 血管痛5件などであり, 重篤なものはなかった。臨床検査値の異常変動は16例 (11.0%) に23件認められ, 肝酵素値の上昇が9件, 好酸球増多が5件などであった。
以上の成績から, CPFX注射薬は, 肺炎をはじめとする中等症以上の呼吸器感染症および複雑性尿路感染症の治療に有効であることが示された。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top