日本化学療法学会雑誌
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Cipronoxacin注射薬の後期第II相臨床試験
重症および難治性感染症における臨床的検討
小林 宏行他
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1997 年 45 巻 10 号 p. 846-871

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抄録

重症および難治性感染症患者を対象として, cipronoxacin (CPFX) 注射薬の有効性, 安全性および有用性を検討した。
1. 総投与症例数は174例で, うち解析対象例は有効性153例, 安全性163例, 有用性152例であった。
2. 投与方法は1日量を600 mg以下とし, すなわち本剤1回200 mg, 1日2回~3回, または1回300 mg, 1日2回として最長14日間点滴静注とした。
3. 有効性解析対象例153例の背景因子は, 60歳以上が72.5%, また基礎疾患 「有」 が74.5%を占め, また前治療無効例は54.9%であった。
4. 臨床効果における有効率は全体で70.6%(108/153例) であった。疾患別の有効率は呼吸器感染症72.1%(49/68例), 外科的感染症86.0%(43/50例), 尿路感染症45.7%(16/35例) であった。全体での1日投与量別有効率は, ≦400 mg投与で68.6%, 600 mg投与で72.3%であり, 呼吸器感染症では≦400 mg投与で66.7%, 600 mg投与で75.6%, 外科的感染症では400 mg投与で86.4%, 600 mg投与で85.7%であった。
5. 細菌学的効果における菌消失率は全体で60.8%(101/166株) であり, 主な菌種別ではMRSA 50.0%, Staphylococcus aureus 45.5%, Enterococcus faecalis 38.9%, Pseudomonas aeruginosa 40.0%, その他のブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌72.7%, 嫌気性菌80.0%であった。
6. 副作用は11例 (6.6%) に認められ, その内訳は注射部位の局所症状6例, 消化器症状4例, 神経症状1例であった。また臨床検査値異常は17例 (10.4%) に認められ, 主に肝酵素値の上昇であった。
7. 概括安全度における安全率は全体で82.8%(135/163例) で, 有用性評価における有用率は61.2%(93/152例) であった。
以上の成績から, CPFX注射薬の600 mg/日投与は内科系および外科系の, 特に経口摂取不能例および前投与抗菌薬無効な重症・難治性感染症に対し第2選択薬として臨床的有用性を有することが示唆された。

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