日本化学療法学会雑誌
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無菌マウスにおけるDU-6859aの肝機能への影響と性差
岩倉 伸次谷村 弘落合 実岡 正巳久山 健
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1997 年 45 巻 2 号 p. 85-91

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抄録

DU-6859aの臨床試験において, 他のニューキノロン系抗菌薬と比較して, 軽度の肝機能検査値異常を呈する症例が約8%とやや多いこと, しかも, その出現頻度は女性に比ペ男性に多く出現することから, 性差の認められることが示唆されている。その原因として,(1) DU-6859aによる肝細胞障害,(2) DU-6859aの強力な抗菌力による腸内細菌叢の変化,(3) 腸管内での1次胆汁酸から2次胆汁酸への変換の停止によるケノデオキシコール酸 (CDCA) の腸肝循環の増加,(4) 肝で代謝される女性ホルモンの関与が推察される。そこで, 腸内細菌が肝機能障害の原因になるか否かを検討するために, 無菌マウスに高濃度と低濃度のDU-6859aを投与して, 血液生化学検査値, 胆嚢胆汁の胆汁酸濃度および組成の変化を検討した。その結果, GOTでは, DU-6859aは高濃度投与群でも雄性マウスで283±561m, 雌性マウスで283±56IU/1と, コントロールの雄598±158IU/1, 雌598±124IU/1と比較して肝機能異常も性差も認めなかった。一方, GPTでも, DU-6859aの高濃度投与群では, 雄42±2IU/I, 雌165±40IU/1と, 有意な上昇は認めず, コントロールの雄96士22IU/1, 雌177±45IU/1と比較して, 性差を認めるが, 肝機能異常は認めなかった。また, 胆嚢胆汁の胆骨酸濃度とその組成も4群内に有意差を認めなかった。しかし, CDCAはDU-6859aの高濃度投与群で雌の方が雄よりも高い傾向を示した。したがって, 無菌の雌性マウスは雄性マウスよりもGPTが2倍高く, DU-6859aの50mg/kgという高濃度投与ではCDCAが増加傾向を示した。しかしながら, それらが肝機能検査値異常を呈することなく, 臨床例など有菌状態では, DU-6859aの投与に起因する屏機能障害は腸内細菌叢が大きくかかわっていると考えられる。

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