日本化学療法学会雑誌
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45 巻, 2 号
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  • 出口 浩一, 鈴木 由美子, 石原 理加, 石井 由紀子, 中澤 ありさ, 松本 好弘, 西成 千里, 中根 豊
    1997 年 45 巻 2 号 p. 69-77
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    1995年に当所において検出した臨床分離株のなかから, 主として市中肺炎および嚥下性肺炎の原因菌となり得る確率の高い菌種を対象として, 薬剤感受性パターンとβ-ラクタマーゼ産生株の割合などを検討し, 以下の結果を得た.
    1. Staphylococcus aureus subsp. aureus はmethicillin-resistant S. aureus (MRSA), Streptococcus pneumoniae はpenicillin-resistant S. pneumoniae (PRSP), Haemophilus influenzae, Moraxella subgenus Branhamella catarrhalis はβ-ラクタマーゼ産生株の割合が高く, Pseudomonas aeruginosa は多剤耐性株が多かった.しかし, そこで得られた薬剤感受性パターンを主として市中肺炎に対するEmpiric therapyでの「抗菌スペクトル」としてとらえると, sulbactam/ampicillin (SBT/ABPC) の高い有用性が示唆された. すなわち, PRSPを含むS.pneumoniae, β-ラクタマーゼ産生H.influenzaeおよびM.(B.) catarrhalisに対する試験薬荊のMIC90では, SBT/ABPCの値が低かったからである.
    2. Microaerophilus gram-positive cocci (Streptococcus milleri group, Gemella morbillorum), Peptostreptococcus spp., Bacteroides spp., Prevotella spp. に対する薬剤感受性パターンの結果からは, S. milleri group とPeptostreptococcus spp., Bacteroides spp. にはcephems (CEPs), erythromycin, clindamycin耐性株が, さらにG.morbillorum, Prevotella spp.にはCEPs, EM耐性株が高い割合であることが示唆された. 一方, Bacteroides spp. とPrevotella spp.のβ-ラクタマーゼ産生株の割合は双方共に80.0%であった. そして, Bacteroides spp. とPrevotella spp. に対するMIC90はSBT/ABPCとsulbactam/cefoperazoneが共にもっとも低い値を示していたが, 上記に該当する菌種に対する試験薬剤のMIC90を薬剤感受性パターンとしてまとめると, SBT/ABPCの値がもっとも低い方に分布していた.
  • 松本 佳己, 石黒 香里, 俵 修一, 吉沢 幸夫
    1997 年 45 巻 2 号 p. 78-84
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    β-Lactam薬の標的酵素ペニシリン緒合蛋白 (PBPs) の検出法として, ヨウ講標識penicillin V ([125I] PCV) を用いた簡易迅速法を考案した。[125I] PCVの合成は, p-(trimethylstannyl) PCVを [125I] Naと反応させることにより容易に行うことができる。[125I] PCVの検出はX線フィルムに比べ高感度なイメージングプレート (IP) を用いるラジオルミノグラフィ (RLG) により行った.本法を膜画分調製時の超遠心の省略、96ウェルマイクロブレートによる反応ステップの簡易化, ミニゲル電気泳動による泳動時間の短縮と組み合わせることによりPBPs精合親和性を簡略かつ迅速に (3日以内) 測定することができた。[1251] PCVを用いて得られたPBP8の電気泳動像は, [14C] penicillin G ([14C] PCG) で得られたパターンと類似していた。また, [125I] PCVを用いて測定したcefbselis (FK037) とimipenem/cilastatin (IPM/CS) のPBPs結合親和性は [14C] PCGを用いたときと大きく変わらず, 本法は有用な代替法となると考えられた。
  • 岩倉 伸次, 谷村 弘, 落合 実, 岡 正巳, 久山 健
    1997 年 45 巻 2 号 p. 85-91
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    DU-6859aの臨床試験において, 他のニューキノロン系抗菌薬と比較して, 軽度の肝機能検査値異常を呈する症例が約8%とやや多いこと, しかも, その出現頻度は女性に比ペ男性に多く出現することから, 性差の認められることが示唆されている。その原因として,(1) DU-6859aによる肝細胞障害,(2) DU-6859aの強力な抗菌力による腸内細菌叢の変化,(3) 腸管内での1次胆汁酸から2次胆汁酸への変換の停止によるケノデオキシコール酸 (CDCA) の腸肝循環の増加,(4) 肝で代謝される女性ホルモンの関与が推察される。そこで, 腸内細菌が肝機能障害の原因になるか否かを検討するために, 無菌マウスに高濃度と低濃度のDU-6859aを投与して, 血液生化学検査値, 胆嚢胆汁の胆汁酸濃度および組成の変化を検討した。その結果, GOTでは, DU-6859aは高濃度投与群でも雄性マウスで283±561m, 雌性マウスで283±56IU/1と, コントロールの雄598±158IU/1, 雌598±124IU/1と比較して肝機能異常も性差も認めなかった。一方, GPTでも, DU-6859aの高濃度投与群では, 雄42±2IU/I, 雌165±40IU/1と, 有意な上昇は認めず, コントロールの雄96士22IU/1, 雌177±45IU/1と比較して, 性差を認めるが, 肝機能異常は認めなかった。また, 胆嚢胆汁の胆骨酸濃度とその組成も4群内に有意差を認めなかった。しかし, CDCAはDU-6859aの高濃度投与群で雌の方が雄よりも高い傾向を示した。したがって, 無菌の雌性マウスは雄性マウスよりもGPTが2倍高く, DU-6859aの50mg/kgという高濃度投与ではCDCAが増加傾向を示した。しかしながら, それらが肝機能検査値異常を呈することなく, 臨床例など有菌状態では, DU-6859aの投与に起因する屏機能障害は腸内細菌叢が大きくかかわっていると考えられる。
  • 山本 啓二, 糸数 万正, 加藤 直樹, 渡辺 邦友
    1997 年 45 巻 2 号 p. 92-98
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    新しく考案された抗菌薬含有凍結乾燥フィブリン塊の骨髄炎治療に対する有用性を探る目的で加in vitroおよびin vivo実験を行った. 抗菌薬は arbekacin (ABK) を用いた。in vitro薬剤徐放実験では, 初期に高濃度の薬剤徐放が得られ, 9回液交換後の18日目では0.4μg/mlとなった.ラットを用いたStaphylococcus aureus (ABKのMIC, 0.2μg/ml) による実験的脛膏骨髄炎に対する治療実験では, ABK含有乾燥フィブリン塊群で, 約1/3のラットにおいて病巣内細菌数が測定限界以下となり, 郭清のみのコントロール群に比べ統計学的に有意な治療効果が得られた. また, ABK含有乾燥フィブリン塊群ではX線所見で骨形成による骨孔の消失が見られ, 組織学的にも明らかな治癒傾向と優れた骨誘導能がみられたことから, ABK含有凍結乾燥フィブリン塊を用いた治療法はヒトの骨髄炎においても有望な治療法になることが示唆された.
  • 松田 静治他
    1997 年 45 巻 2 号 p. 99-107
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2011/08/04
    ジャーナル フリー
    注射用セフェム系抗生物質 cefbzopran (CZOP) の周産期妊産婦細菌感染症例に対する治療効果の杉討を行い, 以下の成績を得た. 総投与症例78例のうち, 対象外症例 (妊娠16週未満) 3例, 投薬違反例 (1日1回投与) 4例および感染症状不明確・臨床検査未実施の5例合わせて12例を除く66例を評価対象とした. 投与方法は, 本剤1回0.5~2gを1日2回点滴静注, 3~14日間投与であった. 委員会判定による臨床効果は, 83.9%(47/56) の有効率であった. うち起炎菌判明例での臨床効果は81.1%(30/37) であった. 細菌学的効果は, 菌消失率 (菌消失例+菌交代例) が80.0%(24/30) であり, 起炎菌49株中42株 (85.7%) が消失した. 治験担当医判定による臨床効果は87.7%(50/57) で, 起炎菌判明例では81.6%(31/38) であった. 細菌学的効果は消失率が80.6%(25/31), 起の消失率は86.0%(43/50) であった. 安全性評価可能例66例中63例 (95.5%) が「安全である」との判定であり, 副作用としては1例 (1.5%) で中等度の頭痛・悪心が認められたが, 投与終了後消失した. 臨床検査値異常は1例 (1.5%) でGOT・GPT・LDHの軽度の上昇が認められたが投与終了後正常化した. 感染症状を有する妊婦4例にCZOP 1gを30分間点滴静注した際の母体血中濃度の推移は, 投与1時間後で30.5~42.6μg/ml, 6時間後には1.0~3.3μg/mlと時間の経過と共に低下した. Two-compartment open modelによるphamacokinetic解析の結果, 血中濃度半減期 (t 1/2 β) は 1.4~5.6時間であった. 分娩前の妊婦15例にCZOP1gを30分間点滴静注した際の投与開始後36分から135分後の母体血中濃度は 17.4~ 74.6μg/ml, 臍帯血中濃度9.0~21.7μg/ml, 臍帯中濃度 1.5~7.5 μg/g, 胎盤中濃度 6.0~ 27.2μg/g, 卵膜中濃度8.3~30.6μg/g, 羊水中濃度は 0.3~3.3μg/mlを示した以上の成績から, CZOPは周産期妊産婦の細菌感染症に有用な薬剤と考えられるが, 特に安全性の確認のためには, さらに症例を重ねる必要があると考えられる.
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