日本化学療法学会雑誌
Online ISSN : 1884-5886
Print ISSN : 1340-7007
ISSN-L : 1340-7007
腸管出血性大腸菌0-157に対する各種抗菌薬の抗菌力とverotoxin 遊離作用の検討
高田 利彦田端 麻紀子菅野 由美子平野 文也井上 松久
著者情報
ジャーナル フリー

1997 年 45 巻 5 号 p. 265-270

詳細
抄録

腸管出血性大腸菌0-157にin vitroで抗菌薬を作用させた場合の殺菌作用とverotoxtnの遊離量を検討した。臨床由来の腸管出血性大腸菌O-157: H7型株に対する抗菌薬の好気条件下における抗菌力は, norfioxacin (NFLX) がもっとも優れ, fosfomyein (FOM), ampicillin (ABPC), chloramphenicol (CP) およびkanamycin (KM) が, ほぼ同等の抗菌力を示した。FOMの抗菌力は, 好気条件下の時に比べ, 嫌気条件下では16倍増強されNFLXのそれとほぼ同等であった。しかし, KMの抗菌力は嫌気条件下では16倍減弱された。一方, 各抗菌薬作用後の培養上清中のverotoxin 1 (VT1) の遊離は, FOMの作用により短時間で一時的な遊離が認められるものの, 作用時間に依存した増加は認められなかった。この遊離現象は, ABPC作用時についてもほぼ同等であった。しかし, NFLX作用時では, 作用時間に依存したVT 1の遊離量の増加が認められた。一方, CPおよびKM作用における遊離は弱いものであった。Verotoxin 2 (VT2) の遊離については, FOMの1 MIC濃度以上の作用によりVT 1の場合と同様に, VT 2の一時的な遊離が認められたが, 作用時間に依存した遊離量の増加は認められなかった。ABPCおよびNFLXの 1 MIC濃度作用では, 作用時閥に依存したVT 2の遊離量の増加が認められ, その遊離はNFLX作用時がもっとも強いものであった。さらに, CPおよびKMの1 MIC濃度以上の作用におけるVT 2の遊離は, 作用時間に依存性がなく弱いものであった。

著者関連情報
© 社団法人日本化学療法学会
前の記事 次の記事
feedback
Top